前記事教育ビジネスの裏側。森絵都「みかづき」のモデル塾・元社員が語る思いからの、まとめメッセージです。
その前に、とあるエピソード。
私と同じく塾講師だった、元上司S先生から聞いた話。
S先生は自分の息子さんが、この春中学受験をしたという。
子供(小6)が受験を受けている最中は、保護者は控え室となる教室で待機するとのこと。
1時間目が国語のテスト。
それが終わった段階で、保護者には早速「入試問題(国語)」が配られたそう。
さて・・・
その後、あなたならどうしますか???
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何が正解というのは、ありません。
しかし、S先生が、
そしてその話を聞いた私が驚いたことに、
ほとんどの保護者は、もらった入試問題を開くこともなく、
(それまで手にしていた)自分のスマホに戻るだけ。
「私のように、国語の入試問題を解いていた人なんて、数人だったんじゃないかな。1割もいなかったよ、入試問題を広げていた人なんて。」
とS先生は言ってました。
「いやいや、それはあなた達が塾の関係者だからであって、
普通の保護者が見たって分かりっこないでしょ。
勉強は塾の先生の仕事、保護者は生活や心のサポートが仕事なんだから!!」
はい、それはごもっともです。
私も、自分の子が受験を考えたら迷わず塾に通わせます。
本人が嫌がらない限りは、他人に教わることを勧める。
親子だと甘えが出ますからね、お互いに。
中途半端に親が勉強内容に首を突っ込むのも、まったくおすすめしません。
(教え方が違って子供に混乱を与えるとか、そもそも親子だとケンカになる確率大)
勉強は塾の先生の仕事、
それは正しいスタンスです。
でも、
でもね・・・
ついさっきまで、我が子が必死に解いていた入試問題ですよ?
しかもこれは2月1日の話。
(首都圏の中学入試では1日の受験校数が最も多く、
大半の生徒は「第一志望」とする学校を、この1日に受けるんです。
滑り止めの学校ならともかく、志望順位が高い学校の入試問題であったはず)
算数ならまだしも、国語ですよ・・・
大人が読めば絶対に理解できる問題文です。
正解するかどうかはさておき。
どんな問題が出たのかな?
例年と傾向は変わってないかな?
我が子は解けたかな?
それが気にならないのかな?
そこに関心はないのかな?
スマホの中にはそれよりも緊急で重要なことがあったのかしら?
と、私は不思議でなりません。
この日のために、親子でどれだけの時間とお金と心を捧げてきたというのか・・・
不思議に思うとともに、
「勉強は塾の先生にお任せ」
そう100%思い込んでいたら、そりゃあ塾の先生から
「この講習はすべて受けましょう」
「この対策講座を追加しないと危ないですよ」
なんて言われたら、勧められた講座をそりゃあ全部受講するよな・・・
と改めて思います。
繰り返しますが、「勉強は塾の先生にお任せ」でいいんです。
でも、それ「だけ」で思考停止してしまうのは危険だと声を大にしたい。
大事なのはバランス。
100%依存してしまっては、お金だってどんどん流れていくようにできています。
数%でもいい。
「自分の子供は」どういう状態かな?今の講座を消化しきれているかな?
「子供の志望校は」どういう傾向かな?そのためにどんな講座が必要かな?
「自分の家計は」今教育費にどれだけかけられるかな?今後の学費や先の受験とのバランスは大丈夫かな?
先生を妄信的に信じるのではなく、自分でも考えていただきたいのです。
子供の話を聞きながら、親子で一緒に考える。
その視点があるのとないのとでは、全然違うと私は思う。
塾はビジネスでもあります。
利益を追求して拡大していくという、企業としての使命がある。
それを否定するつもりは全くない。
けれど、一保護者、一顧客としての立場から見たら、
大事なお金の使い道は「自分で考え」て取捨選択するという視点が大事だと伝えたい。
そうでなければ、お金はどんどん流れていくようにできているんだから。
前記事でご紹介した小説「みかづき」
千明は、塾の経営者側の象徴ですが、
皮肉にも千明の理想とした「学び」にこそが私もお伝えしたいメッセージがこめられています。
千明は「真の学力」がある子供を育てることを理想に掲げて、塾を立ち上げた。
真の学力とは何か?
それは千明の口癖に答えがある。
孫の一郎(最後の第三部での主人公)に千明は口を酸っぱく言い続けた。
「自分の頭で考えなさい」
自分の頭で考え続けること。考えられる人間になること。
失敗してもいい、完璧じゃなくてもいいから、
自分で考えること。
人から言われることだけで、自分を思考停止させないこと。
我が身を振り返れば、私も大いに自戒をこめつつですが・・・w
教育の選択においても「自分の頭で考え」て選択することが大切だということを、
を改めてお伝えしたいのでした。